整体へ行ったはずなのに、施術中の話題はなぜかエネルギーについてだった。
電気などの話ではなくて、見えないエネルギーの話。
自分たちの"元々"の話だ。
新聞のチラシで見つけた自律神経整体に初めて行ったのは9月。今回は2回目。
初回では、ひきこもりの体験があったこと、HSPの気質があって自律神経が乱れがちなこと、最近は股関節や左ひざが痛くなったことを伝えて施術を始めてもらった。
初めての施術後はどうにもこうにも全身がフラフラしてたまらなくて寝込んだし、何なら次の日は左ひざが施術前より余計に痛くなって「いよいよわたしも膝サポーターデビューか」なんて本気で思ったりもしたのだけど、
自律神経整体をやっている別のところのHPをみたら『施術後2~3日は不調が続くこともある』と書いてあったので「なるほどコレは好転反応かもしれない」と信じて様子を見ていたら、何と3日目には膝の痛みがスーッとひいていったのがわかった。
これは素晴らしい!と感動して、2回目を予約し、それが今回だった。
失礼は承知で、膝などの身体の不調が整ったのは正直サプライズに近かった。
なぜなら、わたしが整体へ行った本来の目的はセラピーを兼ねた自分の反応を観るためのものだったから。
『男性施術者が施術する』とチラシに書いてあったとき、意気揚々と予約をしようとしていた自分が見事に固まった。
わたしは男性が苦手だ。
もっというと、自分の女性性が認められないぐらい男性が羨ましくて苦手。
女なんだからこういう風に在るべき、動くべき。という空気感満載の幼いときの環境は、自分の女性性を否定するには十分すぎた。
学生服以来スカートは1着も穿かないし持ってもいない。それにほんの少し前までブラをしてる自分が本当にイヤだった。何だか女装してるみたいで仕方なかったから。
性同一性障害を疑ったときもあったけど、違った。
わたしは別に男性になりたいわけじゃないし自分の女性らしさが嫌いなわけじゃない。
可愛い物も好きだし、何なら最近はワンピースが着たくなる奇跡さえ起こってきている。
でもやっぱり男性を前にすると、何だか自分より上のような感覚がどこかにあって、女性である自分は無力のような感じがするから、自分は無力じゃないってことを必死でアピールするために男性性が強い人間になったような気がしてならない。
そんな捻くれた理由で男性が苦手な自分だからこそ、敢えて、男性施術者にお願いをしようと思った。自分には誰とも比べなくても価値があるし、もう誰とも戦わなくていいことを自分に伝えてあげたかった。
自分がそんな気持ちで足を運んだからからか、男性施術者(Mさん仮)はわたしの心身の状態を何1つ否定せず、HSPのことも知っており、「その気質は才能ですよ」と言ってくれるような優しい人だった。
初回で自分のことはある程度話したから、2回目である今回は黙っていてもいいかもと思っていたけど、施術が始まってうつ伏せになるや否やMさんが「何をして過ごされていましたか?」と聞いてきたので、わたしは10年ぶりぐらいに図書館へ行けたので本を読んでいることなどをつらつらと話しはじめた。
自分軸や他人軸の話、心理的な話、発達障害の話とだんだん心のこと、見えないところのバランスをとる話になったときにはもう、「この人だったら大丈夫かもしれない」と思って、以前体験した大きな意識の話を不思議と自分からし始めた。
「おとぎ話だと思って聞いてくださいね」
「頭がおかしいと思われて当然の内容なので聴き流してくださいね」
ひょこひょこ顔を出す保身にも気づいていたけど、このぐらいのことを前置きしておかないとあまりにもヘンな話なので必要だと思ったのだけど、予想に反してMさんは興味深く聴いてくれた。
「2019年に1度だけ、意識がとても軽い次元に行ったんです」
「わたしのなかでは腑に落ちてるけど、全ては1つのエネルギーだと思うんです」
「言葉にはなかなか落とせないけど愛や調和、なにも問題がない無条件の愛(エネルギー)が自分たちそのものだと感じます」
なんて、世間一般では頭のおかしい話が続くというのに、Mさんときたら施術する手は休めることなく、
「あ、それ。なんかわかる気がします」
「うわー。ボクもそんな体験できるかなぁ」
とか楽しそうに言ってくる。
「わたしとこういう話ができるぐらいだからきっと体験すると思うし、体験しなくてもソレそのものなので何も問題ないですね」
と答え、普通の会話のように笑いながらサクサクと会話は進んでいった。
そんな会話もひと段落し、おかしな話をするヘンな客から始まった会話は無事にこれで着地したかと思ったら、Mさんが施術後半、奥の手を色々と出してきた。
「レイキって知ってます?ボク、勉強したことがあるんです」
「身体に触れることはエネルギーとエネルギーの交換だと思ってるんです」
「ボク、実は女性恐怖症なんですよね。でも女性の好きなことはわかるというか…」
なにこの人!(失礼)
目に見えないことを平然と言って、わたしと似たような抵抗をもってる。
Mさんは紛うことなき別バージョンのわたしだった。
お互いに似ている部分があってピンとくることがあるから、「なるほど」と言い合いながら自分に対しての理解が捗るというか、きっとこれは切磋琢磨し合う仲間だと何だか直感でそう思った。
Mさんは自身がやっている整体事業とは別に、女性専用のサロンを経営して女性スタッフを雇っている経営者だ。
「女性が苦手なので今まで女性にリンパマッサージをしてこなかったけど、今度やってみようと思って…」とMさんが勇気を振り絞って言ってくるもんだから、
「じゃぁ、Mさんがリンパマッサージを始めたら行きますね」と間髪入れずに言ったら、Mさんは「ありがとうございます」と少し緊張しながら言ったような気がした。
けど、わたしも男性が苦手だから敢えてMさんにお願いしているということを話した上だったから、緊張はお互い様なのだった。
見えるところの話も見えないところの話もしていたら小一時間の施術はあっという間だった。
「あっという間でした。気持ち良かったです」
「ボクもあっという間でした」
確かに女性恐怖症の人が女性相手に無言で1時間はキツいか…。なんて帰宅後にふと思ったけど、今回のあっという間体験で、Mさんの女性に対する抵抗が少しでもとれたんじゃないかと思ったし、
自分もリンパマッサージをお願いするなんて勇気が出るとは思わなかったから、お互いにほんの少しであっても本来の自分に近づいたんじゃないかと思う。
施術後は激しい運動などはしないほうがいいらしいので、その後はゆっくりと過ごした。放置されたままだった葉っぱと松ぼっくりの部品をリースに貼り付け、ようやく秋のリースも完成した。
どんぐりは安く買ったイヤリングを少し加工してつけてみた。
次はクリスマスに向けてのリースを作り始める。去年作ってみたかったけど断念したリースを今度こそ!という感じだ。部品は全部で300ピースらしい。きっと間に合うと信じて、ちまちま作り始めるとする。
季節も心身も、変化しないものなんて何もないから、自然に任せてどんどん循環させるんだ。
流れ流れて身を任せて、全部を味わい尽くす所存。