『この気色の悪い音をはやくなんとかしろ!軽くてたまったもんじゃない!
もっとやつらの感情を揺さぶって、こちらに重いエネルギーを注がせろ!』
『や、やってはいるんでげすが、なかなか言うことを聞かなくなってきて…。』
『あぁ?言うことを聞かないだ??やり方が甘いんだよッ!
もっと怒りを煽れ!それから無力感と絶望感を与えて自ら従うように仕向けろ。』
『そ、それを駆使しても残ったやつらには効かなくなってきたんでげす…。』
『チッ…それもいつものことだろうが。さっさと音を上げるまで締め上げろ。』
『重さに飲み込まれたやつらはまんまと恐怖に戦き、
無力感と絶望感の淵で自分ではない誰かこそが世界を救ってくれると従順でげす。
自らを殺したことで、怒りや憎しみのエネルギーをいとも簡単に放射してくれる。
しかし、そのことに気づいたやつらがこちらを向くことを止めはじめたんでげす。
毎度のことではありますが、今回はちょいと音の方向性が違うので厄介でげす。
向くことを止めたというよりも、完全に蚊帳の外にいる感じで興味がなく…。』
『ふん。言い訳はいい。もちろん恐怖以外の手も使ってのことだろうな?』
『へぇ。それはもう満遍なく使っているでげす。
ここさえ我慢をすれば必ず元の生活に戻ると期待をさせ、
言われたことにちゃんと従えばライブや会食も自由にできるニンジン付でげす。』
『特に若い奴らには効果てきめんだろう。』
『そのはずなんでげす!そのはずなんでげすが…。』
『なんだ?』
『あいつらときたら、なぜか興味もなく平気な顔をしているんでげす。』
『ふん。強がって我慢をしているだけだ。そのうち逃げ道がなくなって従い出す。』
『だといいんでげすが…、
あいつら別のことにばかりにエネルギーを注ぎやがって、
あ!そればかりか、音の話をさらっと吹聴しまくっているんでげす。』
『勝手にさせておけ。所詮、自分を生きられない哀れな生き物だ。
互いに敵視させ、互いに戦わせ、互いの首を絞めさせることで我々の手間が省ける。
気づいたときにはもう遅い。』
『と、ということにも気づいて、
争わないことを軸に動いている気色の悪いやつがどうも増えているんでげす…。』
『どうせ気づいても知識ばかりで動けないやつらが多数だ。今までもそうだった。
やつらは変化を嫌う。疑うことは自分と向き合う行為だからな。痛みも伴う。
見たくない自分の恐れの狭間にいるぐらいなら、
別の恐れを利用して変化しないことを望むだろう。』
『その変化を受け入れているやつらがちまちまと増えているのがなんとも厄介でげす。
何とかこっちに引っ張り込まないと共振してまた好き勝手やり出すでげす。』
『案ずるな。そんな馬鹿げた好き勝手が今まで通用してきた試しはない。
が、泳がせるのはせいぜいここまでだ。趣味に合わない音は気色悪く鬱陶しい。
逃げられないほどの揺さぶりを今後は存分に楽しんでもらおうじゃないか。
ついでに派手なデモなんかをやり出してくれると片付けるのが楽だな。
重さの土俵で勝つと思っている哀れなやつらに集団になることをそそのかしてやれ。
正義を謳ってこちら側にエネルギーを落とす術を痛みとともに教えやろう。』
『楽しむ前に死ぬやつらのほうが多いでげすけどね。げへへ。』
『重さの質が最高な死に方をしてくれるから、勝手にこっちが楽しめるってもんだ。
…ん? 誰だ。』
「ふーん。もっとやってよ。その進化の欠片もないくたびれた手品。」
『へ、平気な顔のやつ!?!?』
「次は法を変える手品をして、その次は金を餌に締め上げる手品。
その次は全てに接続をして繋げる手品、その次は偽物の愛を創り出す手品。
全部オチはわかっているけど静かに見ておくから、
堂々とやってくれていいよ。遠慮はしなくて大丈夫。
最初から観ていたからね。
まだ続きがあるんでしょう?さあさあどうぞ。」
『こzかs…』
『tyが…今のu…』
『ng…』
『ob…』
「あらら。せっかくチューニングをしたのにまた音がズレちゃった。
リモートって難しいねぇ。
…まァ、くだらない手品は『ふーん』と観るだけで結構。
おっと、チョコバナナのパウンドケーキが焼けた!
いい香り…♡ よっしゃ!食べるぞー!!♡」
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平気な顔をして生きられちゃ手品師たちは手が出せない。
驚いてもらわなきゃ、戦いてもらわなきゃ、欲しい音が手に入らない。
感情はどれも素晴らしい。
けれど、ずっと怖がって、怒って、悲しんで、互いに争っていたら今までと一緒。
正義を謳って戦って相手を消したとしても何も変わらない。
本当はひとり1人それを知っている。
本当は全てを知っている。
今、どうしたいかを決める時。
今こそ、自分を生きる時。