『同じ瞬間には戻れないんだよなァ』
と、画像データの整理をしながら思う。
皆にも少なからずあるんじゃないかな。
『有り得ないのはわかっているけど、
あの時と同じ気持ちにもう1度なれたなら…』
みたいな瞬間。
大抵、いい瞬間ばかりを切り取って錯覚しているんだけど、
そういう可愛いときも人間あるわけで。
結果的に素晴らしい体験ができたことへ『ありがとう』のはずなのだが、
思い返す瞬間たちがあまりにも色鮮やかで魅力的だと、
何だか今の自分が霞んでいるような気分になって、
つい、ないものねだりをしそうになるし、人間らしく涙も出る。
でも、本当に『あの時に戻りたいか?』と聞かれれば、
決してそうではないし、そういう意味の涙でもないことを嫌なほど知っている。
あの時だったから良かったのだ。
あの瞬間に起こっていた出来事だからこそ完璧だった。
今、同じシチュエーションが起こっても決して満足などできはしないのだ。
人間は変化する。
あの時と似たような気持ちにはなれても、同じ気持ちには決してなれない。
だからこそ、
今この一瞬に湧き出る感動の全てを愛せたらいいなと思った。
今感じた喜怒哀楽はもう2度と来ない。
ただの1度きりだから尊いほど鮮やかで美しい。
止まりかけた記憶の色を自分の好きな色まで染め上げる。
あの瞬間の全てに、ありがとう。お疲れ様。そして、さようなら。