18時半でも明るい空を灯りにチョコミントアイスを食べる。
リビングは薄暗いが、青とも緑ともいえないアイスの色に特段の変化はない。
ぼんやりとした顔で青緑色を口に運びながら、
『子育てに忙しい同年代の母らと、
親のすねをかじってチョコミントのわたし。どっちが幸せなんだろうね。』
などと台詞を溢しはじめるところからテイク1がスタート。
夕方が醸し出すアンニュイさと部屋の薄暗さが絶妙にマッチしている最高のシーンだ。
さらに主人公は続ける。
『こんなにも半分?って思うほど、全てが半分なんだよ。
こんなにも面白い世界で、こんなにもクソッタレな世界。
こんなにも幸せな世界で、こんなにも絶望する世界。
クソッタレと絶望の側面から必死こいて登ってきた人たちは、嫌でも命に恐怖する。
同じ登り方なんて1つもないとわかっていたとしても二の舞にはしたくないわけ。』
誰も観ない映画に台詞が重なる。
『クソッタレと絶望の側面を知っているから、
多くの人が氣づかない面白くて幸せの側面もわかるよ。わかるけどね。
莫迦みたいに副作用がすごいんだわ。思った以上にね。ほんと、思った以上よ。』
すでに辺りの薄暗さが深くなっており、立ち上がった主人公の表情はわからないが、
スプーンをくわえながら空になったアイスカップをゴミ箱へと投げ込んだ。
食べながらの台詞続きだったが、1回もミスがない完璧な出来映えに見事1発OK。
ゴミ箱の中を映した最後のシーンでは、
どれだけ雑にアイスカップを投げ込めるかで上から横からと色々と試し撮りも。
監督曰く、この雑さで主人公の言葉にならない感情を表現したいらしい。
今回のシーンにチョコミントのアイスが選ばれたのかはよくわからないが、
きっとこれも監督の意向だろう。
わたしとしてはどんなアイスでもいいけれど、
久しぶりのチョコミントアイスはチョコの甘さがよくわかって美味しかったよ。
ごちそうさま。