朝6時。コンタクトレンズを装着しようとしたらいつもの場所にコンタクトケースが見当たらない。
『え？え？ …あ、まさか。あ、見えるわ…。』
15年ぶりぐらいにコンタクトレンズを着けたまま寝てしまった。
学生の頃、眼科の先生から着けっ放し放題の状態をあっさり見破られ、こっぴどく叱られたあとは改心して毎日外していたのだけど、久しぶりにやってしまった。
おかげで視界は汚れで真っ白ぼんやり。白目は充血気味。
これじゃ起きて動こうにも動けない。
とりあえずは目薬を片目に数滴ずつ流し込んで視界を確保。
タンパク質汚れは落ちていないだろうけど今は仕方ない。
今日は朝から２つやりたいことがある。見えれば御の字だ。
１つは祖母用の味噌汁作り、もう１つは父の弁当作り。
母は葬式を終えたあとも忙しい実家に残っている。
家にいる高齢の実母、入退院を繰り返す弟、亡くなった実父のことを聞きつけてくる知り合いの接客。
義妹が1人で踏ん張っているため、母も実家にいる間はできるだけのことをしたいのだと思う。
そんな中、わたしにできることは、こちらのことにエネルギーを注がなくても大丈夫だという安心感を多少なりとも与えることぐらいだ。
もちろん母のように全てができるわけではないから、できる範囲で気張らない家事しかやってない。気負ったり張り詰めると長く続かないのを自分がよくわかっているからね。
気まぐれシェフ、気まぐれ弁当屋。そのぐらいがちょうどいい。
視界も曇らないまま、味噌汁も弁当も無事に作り終えることができた。余った卵焼きは祖母と自分の朝ごはんに。
4月から少しずつ料理をし始めたわたしのこと、頭の中にレシピがあるわけじゃないので料理が終わると『今日の夕飯はどうしようか…』と始終何を作るかを考えている。決まるまでも、作るまでも時間がかかる。
ただ、深刻に悩んでるわけじゃなくてほどよく楽しみながら選んでいる感じなのだから自分でも驚くばかり。1年前の自分でも『有り得ない…』と思うような状態だから、人間何が起こるかわからない。
今はわからなくて見えないことも、いつか自分のタイミングでわかったり見えてきたりする。
そんな希望的観測の言葉を最初は全然信じられなかったけど、今なら小さくとも深くそうだと思える。もちろん料理に限ったことではなく。
今晩、オールして頑張ってくれたコンタクトレンズを外す時『面白い1日だった』と思えるように、今日も1歩ずつ自信を創っていく。できたことはおまけ。自分でいることが本丸。
肩の力をぬいて、この瞬間の自分を感じていたい。
