自分にとっての喜びであるものが、
作業になってしまうといつになっても幸せは味わえないね。
いただいたドリップコーヒーが美味しくて、
その会社の通販サイトからめぼしい物を数点買ってみた。
パッケージも素敵なフェアトレードの商品で、一袋80円前後。
嗅覚がほとんどない母でも、開けたての粉の状態だと匂いがわかるぐらいに香り高い。
そんなコーヒータイムの醍醐味は、
お湯を注ぐと湯気とともにその香りが一気に部屋へと広がって喫茶店みたくなるところ。
そんな空間になるのがたまらなく好きだ。
普段がどれだけ浅い呼吸なのかを思い知るぐらい、
コーヒーの湯気を大きく吸い込むとため息にも似たうっとりとした吐息が出る。
呼吸を意識した瞬間、今に戻る。
それがよくわかる。
きっと昔吸っていた煙草もこの役目だったんだろうと思う。
今というこの瞬間に戻るための道具。
でも、あまりにも忙しくしているとそんな道具たちも上手く使えなくなってくる。
わたしの場合は仕事をしていた時の缶コーヒー。
1日1缶、自分を鼓舞するための道具として使っていたんだけど、今ならわかる。
全っ然、味わえてなかった。
コーヒーを飲みながら次の仕事のことを考えたり心配事を綺麗になぞったりしていて、
口の中の感覚はいつだっておざなりで早く飲みきってしまうことのほうが優先だった。
せっかくのホッと一息&喜びの時が、
ただの作業になって味わえていなかったなんて当時は思いもよらない。
『常に先のことを考えろ』って言われながら生きてきたわたしたちは、
歯磨きをしてても食事をしてても、その瞬間を生きてない時が多い。
物理的に地に足はついてるのに心が今にいなくてずっと不安で焦って意識が浮遊してる。
3秒でも5秒でも意識して今に居るって大切だ。
人によって、今に居るための道具が深い呼吸だったり、コーヒーの香りだったり、
空を見ることだったり、風を感じることだったり、色々あると思う。
ずっとは無理かもしれないけど、
自分にとっての喜びの時ぐらいは本気で感じよう。夢中で味わおう。
何気ない瞬間かもしれないけど、今が感じられたら不思議と落ち着くよ。
今を生きられるからね。
桜も咲き始めたようだけど、庭の枝垂れ桃が今年も花を並べ始めた。
呼吸みたいに、血液みたいに、川の流れみたいに、循環を感じて変化を楽しもう。
感じなきゃ、味わえないよ。
今年の春は一味違う気がする。